いろいろ形が用意されているお墓ブログ:12-9-2014
奥さんが旅行先で転び、左足を捻挫した。
翌日からわたしは会社を休み、
奥さんの車椅子を押して通院することになった。
このことは、
函館にいるむすめには内緒にすることにしていたが、
むすめから外食の誘いがあったので、すべてバレてしまった。
次の日の9時、
むすめが子猫を連れてやってきた。
わたしは玄関で迎えたが、一瞬別人かと思った。
二十年近くカナダにおり、ごく最近帰国していた。
電話でのやりとりはしていたが、久しぶりに見るむすめであった。
「元気だったか」わたしがそう言うと、
「元気だわ。それよりも、ママはどう?」と、
むすめは無遠慮に上がり込んできた。
奥さんは何度か外遊し、むすめとよく会っていた。
むすめは、叔母の若い頃に似ていた。
色白のふっくらとした顔で愛嬌がよく、
お子様のわたしとよく話し合う機会があり、
お姉さんのような感覚を起こさせる人だった。
早速介護するむすめの顔を、わたしは何度も横目で見ていた。
「パパ、早く濡れタオル持ってきて。
それから、お昼が近いから、何か買ってきてよ」
わたしは急に、召使いになった。
少々腹が立ったが、老いては子に従え…と考えれば、理解できた。
むすめには、生活力がみなぎっていた。
簡単な昼食後、テレビを見ていたが、
むすめが先程からわたしを注視していることに気付いた。
「ねえパパ、白髪が増えたわね。横の方、耳の上のあたり、真っ白よ」
なんだ、そんなことかと思った。
そしてむすめを見て、むすめもおばさんになっていた。
「今夜、外食しない?」
子猫を抱いたむすめが、晴れやかな顔をした。
わたしはお子様のように、手を挙げて賛成した。
「パパ、ズボンぐらい、取り替えなさいよ」
奥さんはブラシで、髪をとかしている。
その奥さんの後ろに、叔母が立っていた。